きのう何食べた?というドラマの中で
「人が決断する時、相手の何を思い出すかって、
本当にひとそれぞれだし、結末も違うんだね」
という言葉があった。ドラマの中で、
ある夫婦は、今は良い関係になっているけれど、
夫に浮気をされていた過去が忘れられないという妻、離婚することを選んだ。
ある夫婦は、今まさに別れを選びたい状況だけれど、
昔、息子の夜泣きに悩まされている時、
夫が「君は寝ていて良いよ」と息子を連れ出してくれた、その記憶で
妻は離婚を思いとどまった。
私は……
そうですね、夫には、特に子どもたちが小さい頃の恨みつらみ
たくさんございます。
でも、夫について、ぱっと思い出したことが、ひとつある。
ぽこすけ(小2女子)2歳の頃
半年間ほど、言葉のどもりがとてもひどかった
ぽこすけは、1歳前にはもう話す子だったし、
第一子、初めての子育てだったので、私は戸惑った。
あれ、と思うことはあったけれど
はっきり分かったのは児童館でのやり取り
児童館に行くと受付で「おなまえおしえてください」
と言われて、いつもはぽこすけが自分の名前をいうのだけれど、
その日は、横を向いて言わなかった。
恥ずかしいのかな、と思ったけれど、帰りは
「ぽこ、おなまえいうね!」
と言って、ぽこすけは自分で受付に向かった。
私は妹ちゅーたの帰り支度をしながら、ぽこすけの声が聞こえた。
「◯◯(苗字)……分かんない。」
自分の苗字だけ言う声が聞こえた。もう一度、
「◯◯(苗字)……分かんないー!!!」
私はここで、名前が言えないんだ、ってハッと気づいて
受付の先生も、ぽこちゃんね、分かるよって言ってくれたけど
ぼーぜんとしていたぽこすけの顔
今も思い出す。
「おなまえ、いえなかった……」
ぽこすけは、そう自分でぽつんと言った。
その顔を言葉を思い出して、私は今でも、思わず涙が出た。
たった2歳だけど、
おなまえ、いいたくて、いえなくて……
こちらが思っている以上に、いっぱいいっぱいいーーっぱい
感じて、考えて、ドキドキして
小さな心とからだを動かしているんだ。
そう思った。
いつも自分のことを「ぽこ」と言っているが
「ぽ、ぽ、ぽ、、、なんだっけ」となってしまう
顔まで使って一生懸命、でも言えない。
うなす! うでんき!
とか言ってたな、うをつけると言えるという工夫。
私の中で、ぽこすけは
「しゃべれなくなってしまった」
という意識が強かった。
ぽこすけも、
「ちゅーた(0歳の妹)なの…」
と言っていた。
当時、夫は忙しく、ほぼワンオペ育児だった。
ぽこすけのどもりがどんどんひどくなっていることを、夫に話すと
こう言った。
「へぇ、進化だね!!!」
子育て初めてだったし、この頃は必死で、今が全てだったから、
このひどくなっていくどもりが永遠に続く気がして、
どうしたら良いんだろうと不安になっていたから、
拍子抜けした。
……そうか、私は言葉が後退したかと思ったけれど、
進化、かぁ。
夫は基本的に、とんちんかんである。
とんちんかんの一種かもしれないけれど、私はとても救われた。
その時の自分になかったものをくれた。
これが、夫について思い出したこと。
言語化して、心に刻まれてしまったから、
まだ、一緒にいられそうだな。
(ちなみに、このどもりは、約半年をピークに落ち着き
何をしたわけではないが、いつの間にかすっかりなくなった。
(一時保育の先生などには、どもりを指摘はしないようお願いした。)
妹ちゅーたも2歳の頃、半年間くらい、ひどくどもった。
ぽこすけの小学校には「聞こえとことば」の教室があり
さまざまな子は確かにいるが、幼少期のどもりの大半は
様子をきちんとみつつ、でもまずはあまり気にしないこと、だそうだ。
なぜなら、子どものどもりを、自分のせいだ、と
主に育児をしている人が自分を責める、または責められることが多いから……
よく分かる。でもちがうからね!あなたのせいじゃない。)